情報II / 情報社会の進展と情報技術 2 / 6

人工知能(AI)の仕組みと活用

人工知能(AI)の仕組みと活用

スマートスピーカーとの会話、カメラの顔認識、文章を書く生成AI——人工知能はすでに日常の道具になりました。しかし「AIはどうやって賢くなるのか」を説明できる人は多くありません。この講義では、機械学習・深層学習・生成AIの基本的な仕組みと、活用の際の注意点を学びます。

人工知能とルールベースの限界

人工知能(AI:Artificial Intelligence)とは、認識・推論・判断など、人間の知的な活動をコンピュータで実現しようとする技術の総称です。初期のAIは、人間が「もしAならばBせよ」という規則を大量に書き込むルールベースの方式が中心でした。専門家の知識を規則化したエキスパートシステムが代表例です。しかしこの方式には、「猫の写真を見分ける規則を言葉で書き尽くせない」というように、人間が無意識に行っている認識をルール化できないという限界がありました。

機械学習 — データから規則性を学ぶ

この限界を破ったのが機械学習(Machine Learning)です。人間が規則を書く代わりに、大量のデータからコンピュータ自身が規則性(パターン)を見つけ出す方式です。学習のさせ方によって3つに分類されます。①教師あり学習:正解ラベル付きのデータ(例:「これは猫」「これは犬」と印を付けた画像)で学習させ、未知のデータの分類や数値の予測を行う。②教師なし学習:正解を与えず、データの中から似たもの同士のまとまり(クラスタ)や構造を見つけさせる。顧客のグループ分けなどに使われる。③強化学習:正解の代わりに「報酬」を与え、試行錯誤を通じて報酬が最大になる行動を学ばせる。ゲームAIやロボットの制御に使われます。

深層学習(ディープラーニング)

機械学習の中でも近年のAIブームを牽引しているのが深層学習(ディープラーニング)です。人間の脳の神経細胞(ニューロン)のつながりを数式で模したニューラルネットワークを、多数の層に深く重ねたものです。従来の機械学習では「画像のどこに注目するか」(特徴量)を人間が設計する必要がありましたが、深層学習は特徴量そのものをデータから自動的に獲得できる点が画期的でした。2012年ごろから画像認識の精度が飛躍的に向上し、音声認識・自動翻訳・囲碁AIなどで人間に匹敵する、あるいは上回る性能を達成しました。深層学習の成功は、①大量のデータ(ビッグデータ)、②計算能力の向上(GPUの活用)、③アルゴリズムの改良、という3つの条件が揃ったことで可能になりました。

📘 例 手書き数字を認識するAIを教師あり学習で作るには、「この画像は7」「この画像は1」というラベル付きの画像を数万枚用意して学習させます。学習後のAIは、見たことのない手書き数字でも高い精度で読み取れます。重要なのは、AIは「7の定義」を教わったのではなく、大量の例から「7らしさのパターン」を統計的に獲得したという点です。だから、学習データに含まれないような癖の強い字は間違えることがあります。

生成AIの登場

2020年代に入り、文章・画像・音声・プログラムなどを新しく作り出す生成AI(Generative AI)が急速に普及しました。文章生成AIの中核は大規模言語モデル(LLM)で、インターネット上の膨大なテキストから「ある単語の列の次に来る確率が高い単語」を予測するように学習しています。もっともらしい文章を流ちょうに作れる一方、仕組み上、事実でない内容を自信ありげに出力する現象(ハルシネーション)が起こりえます。生成AIの出力は「確率的に自然な続き」であって「検証された事実」ではない——この理解が活用の大前提です。

AI活用の注意点

AIを使う際は次の点に注意が必要です。①学習データの偏り(バイアス)がそのまま判断の偏りになる(例:過去の採用データで学習したAIが特定の属性を不当に低く評価する)。②深層学習は判断の根拠を人間が説明しにくいブラックボックスになりがちで、説明可能なAI(XAI)の研究が進められている。③出力の検証と最終判断の責任は利用者・人間の側にある。AIは強力な道具ですが、「道具の癖」を知って使うことが情報IIの学びの核心です。

💡 ポイント
  • ルールベース=人間が規則を書く。機械学習=データからコンピュータが規則性を学ぶ。
  • 機械学習の3分類:教師あり(ラベル付きデータで分類・予測)・教師なし(構造の発見)・強化学習(報酬で試行錯誤)。
  • 深層学習=多層ニューラルネットワーク。特徴量を自動獲得できる点が画期的。
  • 深層学習成功の3条件:ビッグデータ・計算能力(GPU)・アルゴリズム改良。
  • 生成AI(LLM)は「次に来る確率が高い語」の予測で文章を作る。ハルシネーションに注意。
  • バイアス・ブラックボックス問題を理解し、検証と最終判断は人間が担う。

練習問題

  1. ルールベースのAIと機械学習の違いを、「規則を誰が作るか」に着目して説明しなさい。
  2. 機械学習の「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の違いを、それぞれの学習のさせ方が分かるように説明しなさい。
  3. 深層学習が従来の機械学習と比べて画期的だった点を、「特徴量」という語を使って説明しなさい。
  4. 生成AIの「ハルシネーション」とは何か説明し、なぜ起こるのか、大規模言語モデルの仕組みから理由を述べなさい。

解答・解説

  1. 解答:ルールベースは「もしAならばB」という判断の規則を人間があらかじめ書き込む方式。機械学習は、人間が規則を書く代わりに、大量のデータからコンピュータ自身が規則性(パターン)を見つけ出す方式。言葉で書き尽くせない認識(画像の見分けなど)も、例からの学習で実現できるようになった。
    解説:「人間が規則を書く」対「データから機械が学ぶ」の対比が核。ルール化できない問題を解けるようになった意義まで書ければ完璧。
  2. 解答:教師あり学習は、正解ラベル付きのデータで学習させ、未知データの分類や予測を行う方式。教師なし学習は、正解を与えずにデータの中から似たもの同士のまとまりや構造を見つけさせる方式。強化学習は、正解の代わりに報酬を与え、試行錯誤を通じて報酬が最大になる行動を学ばせる方式。
    解説:「正解あり/正解なし/報酬」という3つの学習信号の違いで整理する。具体例(画像分類・顧客のグループ分け・ゲームAI)を添えられると理解が深い。
  3. 解答:従来の機械学習では、データのどこに注目すべきかという特徴量を人間が設計する必要があった。深層学習は多層のニューラルネットワークにより、特徴量そのものを大量のデータから自動的に獲得できるため、人間が言語化できない複雑なパターン(画像・音声など)の認識で飛躍的な精度向上を実現した。
    解説:「特徴量の自動獲得」が答えの核心。多層ニューラルネットワークという構造にも触れられているとよい。
  4. 解答:ハルシネーションとは、生成AIが事実でない内容をもっともらしく自信ありげに出力する現象。大規模言語モデルは「ある単語の列の次に来る確率が高い単語」を予測するように学習しており、出力は統計的に自然な文章であって、事実かどうかを検証したものではないため、実在しない情報でも流ちょうに生成してしまう。
    解説:現象の説明に加え、「次語予測の仕組み上、正しさは保証されない」という理由まで書けているかが採点の中心。対策は出典確認・クロスチェック。

このレッスンのQ&A

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