相関と回帰 — データから予測する
「気温が上がるとかき氷が売れる」「勉強時間が長いほど得点が高い」— 2つの量の関係をとらえられれば、一方から他方を予測できるようになります。この講義では、関係の強さを測る相関係数と、予測の道具である回帰直線を学び、分析で陥りやすい落とし穴を確認します。
散布図と相関
2つの量的データの関係は、横軸と縦軸にそれぞれの量をとって点を打つ散布図で観察します。一方が増えると他方も増える傾向を正の相関(点が右上がりに並ぶ)、一方が増えると他方が減る傾向を負の相関(右下がり)、どちらの傾向もなければ相関がないといいます。
相関係数 — 関係の強さを数値化する
相関の向きと強さを1つの数値で表したものが相関係数 r です。rは必ず−1以上1以下の値をとります。
・r = 1 に近い:強い正の相関(点がほぼ右上がりの直線上に並ぶ)
・r = −1 に近い:強い負の相関(右下がりの直線上に並ぶ)
・r = 0 に近い:直線的な相関がほとんどない
目安として |r| が0.7以上なら「強い相関」、0.4〜0.7で「中程度」、0.2以下は「ほとんど相関なし」と読むことが多いです。注意点として、相関係数は直線的な関係しか測れないこと(U字型の関係ではrが0に近くなる)、外れ値1つで大きく変わることがあります。必ず散布図とセットで確認しましょう。
回帰直線 — 予測の道具
散布図の点の並びに最もよく当てはまる直線を回帰直線と呼び、y = ax + b の形で表します。「最もよく当てはまる」の基準には、各点と直線とのずれ(残差)の2乗の合計が最小になるようにする最小二乗法が使われます。回帰直線が得られれば、xの値からyの値を予測できます。ここでxを説明変数、yを目的変数と呼びます。
・傾き5の意味:気温が1℃上がるごとに、売上がおよそ5個増える。
・明日の予想最高気温が28℃なら、売上の予測は y = 5×28+20 = 140+20 = 160個。
・予想が32℃なら y = 5×32+20 = 180個。仕入れの計画に活かせます。
ただしこの式は観測したデータの範囲(たとえば20〜35℃)でのみ信頼できます。x=0℃を代入して「真冬でも20個売れる」と考えるのは、データの範囲外への当てはめ(外挿)であり危険です。
落とし穴① — 相関と因果は違う
相関係数が大きくても、一方が他方の原因だとは限りません。「アイスの売上」と「熱中症の搬送者数」には強い正の相関がありますが、アイスが熱中症を引き起こすのではなく、「気温」という第三の要因(交絡因子)が両方を増やしています(擬似相関)。また、因果の向きが逆である可能性(成績が良いから自信がつくのか、自信があるから成績が伸びるのか)も常に考える必要があります。
落とし穴② — 標本の偏り
集めたデータ(標本)が全体(母集団)を正しく代表していなければ、どんな分析も歪みます。たとえば「スマホアプリでアンケート」を取れば、スマホを使わない人の意見は最初から入りません。これを標本の偏り(選択バイアス)と呼びます。誰を対象にどう集めたデータなのかを常に確認しましょう。
- 相関係数rは−1〜1。1に近いほど強い正の相関、−1に近いほど強い負の相関。
- rは直線的な関係だけを測る。外れ値に弱い。散布図と必ずセットで見る。
- 回帰直線 y=ax+b は最小二乗法で求める。xから yを予測できる。
- データの範囲外への予測(外挿)は信頼できない。
- 相関≠因果。第三の要因(擬似相関)・逆の因果・標本の偏りを疑う。
練習問題
- 相関係数として絶対にあり得ない値を次からすべて選びなさい。 ア 0.85 イ −0.3 ウ 1.2 エ −1 オ −1.5
- 回帰直線 y = 3x + 10(x: 勉強時間[時間]、y: 小テスト得点[点])が得られた。x = 20 のときの y の予測値を求めなさい。また、傾き3は何を意味するか答えなさい。
- 「図書館の利用回数が多い生徒ほど成績が高い」という相関から「図書館に行けば成績が上がる」と直ちに結論できない理由を、擬似相関という言葉を使って説明しなさい。
解答・解説
- 解答:ウとオ
解説:相関係数は必ず−1以上1以下。1.2と−1.5は範囲外。−1はちょうど「完全な負の相関」でありあり得る値。 - 解答:予測値は70点。傾き3は「勉強時間が1時間増えるごとに得点がおよそ3点上がる」ことを意味する。
解説:y=3×20+10=60+10=70。ただしデータの範囲外のxに当てはめる外挿には注意。 - 解答:「もともと学習意欲が高い」といった第三の要因が、図書館の利用回数と成績の両方を高めている擬似相関の可能性があるから。
解説:相関関係は因果関係を保証しない。因果を確かめるには、他の条件をそろえた比較実験などが必要。